ダイレクトに周波数を残す
初期のRCサクセションに「僕の好きな先生」という曲があった。
清志郎の好きな先生は職員室が嫌いで、いつも美術室で一人タバコを吸っていた。
清志郎がヒッピーに捧いだように、先生もブタどもが嫌いだった。
清志郎の好きな先生は、おそらく自宅の部屋以外では、
唯一、美術室が安心できる場所だった。
誰しも「安心できる場所」というものがある。
いつでも戻れる場所を確保しているから、
外の世界へ出かけていける。戦える。
僕が好きな場所は、自宅の部屋以外では、やはり近所の
・海
・喫茶店
・温泉
など…
もう何年も前から、僕の近所では軒並み喫茶店が潰れている。
理由はいろいろあるだろうが、
・禁煙ブーム
・スターバックス
・コンビニでのスターバックスもどきなコーヒー提供
などが大きいのかな?
で、今はなきコーヒー屋のマスターに
「なんで、こんなにここのコーヒーは美味しいの?」
と聞いたことがある。
マスター曰く、
「水だ。某場所の井戸水を汲みに行っている。いくら上等のコーヒー豆を使っても水が悪ければ、風味がダイレクトに伝わらない。
重要なのは、コーヒー豆が持っている本来の味をそのまま引き出すこと…」
・・・・
僕は電子レンジが嫌いだ。
弁当も極力、チンしない。冷たいまま食べる。
なぜ、電子レンジでチンすると食物が暖まるかご存じだろうか?
食物を原子レベルで電磁波がぐりぐり摩擦し、熱を発生させるからである。
これは、食物の本来の原子構造を変えてしまっている。
焼き鳥をレンジでチンすれば、それは「焼き鳥」ではなく、「焼き鳥もどき」である。まあ、ちょっと極端に言えば…遺伝子組換えの一種のようなものではないか…
焼き鳥は、1回だけ焼いてすぐ食べねば、本来の焼き鳥ではない。
・・・・
そして、やっと音楽の話である。
何かと言うと、音というアナログの物理界の振動現象を
どうやったら、デジタルの情報へとできるだけダイレクトに変換させられるか?
という問題。AD変換の問題を考えたい。
アナログの質感がいかに好きでも、最初から最後までをフルのアナログカッティングのレコードにすることができない。
レコーディングシステム自体が、ProToolsだから、どうやったってダイナミックレンジ、つまり上と下がある。
すべての音の始まりをアナログの機器、アナログのマスターテープで残せない環境なら、デジタルで曲を残さざるをえない。
デジタル録音をハイレゾとか言って、レコードにしてもしょうがない、と僕は思う。
例えば、1976年当時のレコード「ホテル・カルフォルニア」には、どうやってもならない。
それはともかく…
いま、わたしが、
どう、デジタルと共存し、どう音楽を残すか?
今至っている結論は、AD変換は1回だけしかしないということ。
1回だけでもその音本来のものは、失われているが、
ダイレクトさを極限まで出したいなら、コーヒーと焼き鳥に習って、
AD変換は1回まで!
そして、DAWでバウンスはしない。
さもないと、「安心できる場所」でなくなってしまう。
そして「安心できる場所」でないなら、パフォーマンスは出せない。

